「星の王子さま」
先日娘がとつぜん
「ねーねーピーターパン症候群って知ってる?」
と聞いてきた。
ああ、あれでしょ?大人になっても子供のままで居たい人達のことでしょ?
と聞きかじった程度の返答をしたところ、娘がすぐさま検索してピーターパン症候群がなんたるかを説明し始めた。
うんうん、もう分かった。ママはそういう人を仕事で何人も見てきたし今更ピーターパンなんて可愛らしい呼称など・・と思いつつ。
「そういう人がみんな顔もピーターパンだったらいいのにねー。だったらちょっとは世界も平和だな」と言って笑った。
とはいえ私も人のことは言えない。多分死ぬまで子どもの自分がデンと居座ってるだろう。物わかりのいい大人つまり日和見的な人間にはどうやらなれそうにない。
しかし、このピーターパン症候群というのはどうやら自立心がないことと、男尊女卑の気があり女性の足を引っ張るというタチの悪さがあるらしく、ピーターパンという名前をあてがっちゃうのは少し違う気がする ..
さてここで少しだけ、ルドルフ・シュタイナーの言葉を寺尾紗穂さんの著書「天使日記」より引用します。
「真の意味における生命段階の例としては、まだ思考することのできない子どもに、強い、集中的な有機的生命が現れる場合を挙げることができます。
このような子どもの生命力は、そのまま私たち大人の中に受け継がれていきます。しかし歳をとるにつれて、このような子どもの生命力の中に、少しずつ衰退してゆく生命力が入り込むようになるのです。「ルドルフシュタイナー(人間と天使、および高次のヒエラルキー存在の関係)」
2006年頃、私はCINRA.netというアーティスト登録型サイトに登録していた。そしてある日、ある方から映画のスタイリストをお願い出来ないかというメッセージが来た。
そのメッセージの中にはこうあった。
「作品がどれも有機的です」と。この言葉が何だかとても嬉しかったのを覚えている。
さて、いつも前置きが長くなってしまいますね、、ピーターパンではなく星の王子さまの話を。
年に2回ぐらい読み返す星の王子さま。
自分が一般とされるルーティンやルールからうまく身を守るためにこの本を読む。
何度読んでもその度に心に響く言葉があり私にとっても大切な一冊。
先日読んだ時は、中盤に出てくるキツネの言葉にしばしページをめくるのを止めた。
キツネは一人で旅をしている王子さまにこう言います。
「キミとは遊べない。なついてないから」
王子さまはキツネに訊ねます。
「なつくってどういうこと?」
キツネはこたえます。
「もう随分忘れられてしまってることだ。絆を結ぶということだよ」
「絆を結ぶ?」
「そうとも、キミはまだ、僕にとっては他の十万の男の子と何も変わらない男の子だ。だからぼくは別にキミがいなくてもいい。キミもべつにぼくがいなくてもいい。
でももしキミがぼくをなつかせたら、キミはぼくにとって世界で一人だけの人になる。ぼくもキミにとって、世界で一匹だけのキツネになる ..」
ここを読みながら、先月までやっていた障害者サポートのメンバーの一人、25歳の女の子Mさんが頭に浮かんだ。
辞める少し前、彼女にそれを伝えると普段落ち着いた様子に見えていた彼女が涙を流した。
冗談を言い合ったり、他のメンバーのサポートをしてくれたりとMさんには助けられることが多かっただけに、彼女の気持ちを大事にしたいと思った。そして私に対して「今までで一番好きなスタッフでした」と最後心をオープンにしてくれた。
過去に思い悩んでリストカットしたりメンタル疾患もあるんです私。全然しっかりなんてしてないです。でもここまで心を開けた人は初めてです。と。
私が彼女にとって一つの大人サンプルになれたらいいなあと、それを願うだけだ。
生きてると大変なこともいっぱいあるけど、こんな変な大人も要るからちょっとは安心してねーと言いたい。
これが多分、キツネの言う(なつく)ということなのかな。
私にとってMさんは、もうただの障害者の女の子ではなくなったし、Mさんにとってもきっと私がただのスタッフではなくなった。時々ふっと思い出す、何か分からない温かいもの。
世の中には沢山の人が居るけれど、キツネの言う「もうもう随分忘れられてしまってること」を、一人一人が取り戻していくことは出来ないのかな。
そうしたら世界は平和になるよね、きっと。