空

雨宿り

傘を忘れた

気づいた時にはすでにスーパーに着く頃だった

この2ヶ月わたしにとってはハードワークが続いていて

やっとの休みに近所の医院へ行った後だった

(傘、忘れちゃったなあ)

また次持ち帰ればいいか、とスーパーで食材を買い

外に出るとポツポツと雨粒が落ち始めている

少しの雨に打たれるのは好きだけど

家に着くまでどうか堪えて欲しい

しかし堪えきれなくなった雨雲から

ボトボト勢いよく雨が降り出した

ああ、困ったな

魚に氷を入れておいてよかったな

このままズブ濡れになりながら家まで早歩きする?

いや、なぜそこまでしなくちゃならない?

このマンションの下で雨宿りしよう

急ぐ必要など何もないのだから…

いつも通るマンションの駐車場で雨宿りをした

雨は勢いを増してきた

白いジャンプスーツを着た警官がバイクで通り過ぎる

傘もささずに歩く作業員らしき人

折り畳み傘をさし自転車で走り抜けていく高校生

Uberの箱を抱えて前のアパートに上がっていく人

昨日から、心が少しガサガサしていた

どうしてこうなんだ?という疑問は

たぶん一生消えることはないんだろう

どうしてこうなんだ?に対しあまりにも無力を感じた時

それが怒りに変わってしまうことがある

最初から諦めるしかないのだろうか?

最初から諦めて何もしないのが賢い生き方なのだろうか

いや、怒りすら覚えないのは

大切なことが何もないのと同じではないか?

だからわたしは波風立てたくない人にとっては

ただ煩くて目障りだろう

そんなことは分かってる

でもそうせずにいつか死を迎えたとき

わたしは自分を生きたとは言えないまま死ぬだろう

それが嫌なだけ

雲の合間に青空が覗いている

雨はもうすぐ止む

ああ、もっと雨宿りがしたくなった

これが近所のマンションではなく

都内のお洒落なカフェや雑貨屋だったら

誰かが傘を貸してくれたりして

「あのお名前だけでも..」という絵面が出来たりするのだろうか

いや、ないな

逆に引くかも

もうすぐ雨は止みそうだ

傘を畳んで歩き出す人もいる

まだ止まないうちにわたしは家に向かって歩き出した

不思議と心のガサつきが和らいでいる

誰かと一緒じゃダメだった

一人で雨宿りをするたったそれだけに

何かおかしくなっている自分がいた

わたしを急かすものなど何もない

この雨宿りは優雅だ

優雅とは、急がなくていいことなのだから

帰ったらすぐこれを書き留めようと思った

食材も大丈夫

忘れた傘のことは一旦置いておこう

わたしには雨宿りが必要だったのかもしれない

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